野外手帳
35万7000km
2025年11月11日記
11月5日、インターネット上で「スーパームーン」という表現をたくさん目にしました。これが天文学の正式な用語ではないことは知っていたものの、ネイティブ・アメリカンの季節の満月の呼び名あたりから来ている言葉ではないかと、勝手に思い込んでいたのです。
ネイティブ・アメリカンが名付けた満月の名前は、ネットニュースなどでよく紹介されています。例えば、11月の満月は「ビーバームーン」。これは、北アメリカに生息するビーバーが11月に巣作りを始めることに由来しているらしいです。こうした満月の名前は興味深い一方、日本の季節感とはあまり関係がないので、こればかりが取り上げられることに違和感を覚えていました。
そこで、この記事を書くにあたって「スーパームーン」について改めて調べてみたところ、これはアメリカの占星術師、リチャード・ノル氏が1970年代に独自に使い始めた言葉だということがわかりました。しかも彼は、「スーパームーンの前後に大災害が起きる」などと主張したらしいです。トンデモ付きでした。
私は通勤中にFMラジオを聴くことが多いのですが、番組によっては「明日の運勢」といった星占いに結構な時間を費やしています。常々、そういった占いは無意味だと感じているものですから、ここではスーパームーンという表現は以降使わないようにします。
国立天文台のサイトでは「2025年で地球にいちばん近い満月」という表現を使っていました。

11月5日22時19分に満月となり、6日の7時27分に近地点を通過するということでした。この写真は22時ごろ撮ったものなので、ほぼ完璧に満月だったことになります。残念ながら朧月でしたが、月暈を見せてくれました。このときの地球からの距離は約35万7000kmだったそうです。

これはその翌日、11月6日の月齢15.9の月。この夜は、前夜と打って変わって、はっきりくっきり見えていました。望遠鏡ではとてもまぶしく感じて、接眼レンズから目を離してもしばらく残像が見えるほどでした。
-2025年11月
小雨の中を飛ぶオナガ
2025年11月10日記
雨が小ぶりになったので、少し畦道を歩いてみることにしました。

葉の色づきはだんだんと里に降りてきた感じです。

こちらは雲をまとった里山の表情。

最近割とよく出会うオナガの小群。

農耕地に点在する木立を行ったり来たり。

前に見かけたときは頭に白い羽毛が混じっている若い個体がいましたが、今回は全員の頭が黒黒していました。

一時期とても少なく感じたスズメも戻ってきたように思います。

神社の杉の木の梢にいたシメ。昨冬はほとんど見かけることがありませんでした。今季は早々に登場しています。いつもの年と様子が違うと、すぐ気候変動に結びつけて考えてしまいがちです。こうして元に戻るとちょっと安心します。

歩いている間、雨は降ったり止んだり。

その雨に濡れながらアンテナに止まっていたキジバト。

庭木にいたジョウビタキ。

相変わらず止まらないクマ報道に感化されて、山歩きを自重する日々です。しばらくは自宅周辺の記録ばかりになりそうです。
十三夜の月と土星の接近
2025年11月8日記
月の右下にぽつんと光って見えるのが土星です。

雲越しでしたが、それがかえっていい感じになりました。
11月2日の画像です。月齢は11.9。
色づきが進む森
2025年11月7日記

畦道からいつもの近所の森に接続です。ただし、奥までは入らず短時間で。クマ用心です。

色づきが進んでいました。

ヒヨドリ。

シジュウカラとエナガは林縁の人家付近で見ました。

他にはヤマガラ、コゲラ、アカゲラ、アオゲラ、イカル。

もうすぐ黒くなるヤブランの実。

ムラサキシキブ。

かすかに期待していたマミチャジナイには会えませんでした。
ツグミ初認
2025年11月6日記

リンゴピカピカの11月上旬の畦道探鳥です。

セイタカアワダチソウの黄色が勢いを失って、これがもともとの日本の秋の色という感じの眺めでした。

アキアカネもその周りの草もいい色です。トンボは他に、ナツアカネとミヤマアカネを観察しました。

いい色といえばやっぱりノブドウ。

今回はツグミを初認できました。季節が進んだことを感じます。
先日初認したジョウビタキは数を増やしていました。

これは自宅裏で。

これは畦道の先の住宅街で。

上の写真と同じ個体です。ぐぜりを聞きました。

さらに先の住宅街ではフェンスの上に雌。

すぐ近くには雄がいました。
というわけで4個体の観察です。
ヒヨドリは渡りの群を見ることがなくなりました。

このヒヨドリはトンボを捉えていました。トンボもかなりの飛行術を持っていますが、ヒヨドリはそれを上回るということのようです。

このハシボソガラスは、小鳥のようなものをくわえているように見えます。

トビ。

ノスリ。

電柱に止まろうと減速しているノスリです。

用水にはキセキレイの姿。

ここにはカルガモもいました。

キジバト。
その他、オナガ、モズ、ハクセキレイ、スズメ、カワラヒワ、シメ。昨冬はほとんど見ることができなかったシメ、今シーズンは早々に到着し、数も多めです。
蝶はヤマトシジミ、ウラギンシジミ、キタテハ、ツマグロヒョウモン、キタキチョウを確認しました。ウラナミシジミは見ることができませんでした。そろそろおしまいかもしれません。

色づき始めた木々やツグミの初認と合わせ、これも季節が進んだことを感じたことの一つになりました。
レモン彗星観望の失敗と成功
2025年11月5日記
話題になっていたレモン彗星(C/2025 A6:2025年1月3日にレモン山サーベイによって撮影された画像から発見された長周期彗星)。
11月1日に、以前、紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3:2023年に中国の紫金山天文台と南アフリカのアトラス望遠鏡によって発見された非周期彗星)を見た場所に行ってみました。

夕方から宵にかけて西の空、へび座からへびつかい座のあたりで見え、明るさは4〜5等という情報でしたが、彗星が見えるはずの西の空は雲が厚く横たわっていました。
時間が経つにつれて雲は次第に薄くなり、切れ間に星が見えるようになったものの、私のレベルではその星がどの星座のものなのかもわからず、彗星の位置の見当さえつけることができませんでした。
翌日も西の空は曇天。翌々日は雨天でした。
平日夕方の観望は仕事で無理なので、次の観望機会は11月8日の土曜日になりそうでした。ただ、10月下旬から11月上旬が一番条件がよく、その後は明るさや高度が下がって見づらくなっていくということだったので、今回は無理だったか…と思いつつ、もう一度撮ってきた画像を見返していたのです。念のために雲の切れ間に向かってレンズを向けた写真を、拡大して見てみました。

前回の紫金山・アトラス彗星と、その時のへびつかい座周辺の星の並びの記事を見ながら、同じ星の並びを探してみると、一致する場所を発見しました。そしてそこには写っていない星、つまり恒星ではなく彗星と思われる星を見つけることができたのです。
偶然というかなんというか。たまたまレンズを向けた方角が合っていて、そして雲と雲の間にちょうど彗星が見えていたという幸運でした。
上の画像の右上あたりをトリミングしたのが下の画像。

そして矢印の先にあるのが前回へびつかい座周辺の星を撮ったときにはなかった星です。

さらにトリミングして画像処理をかけてみると、尾を引いていることがわかります。やっと見つけたレモン彗星です。
双眼鏡を使っても「これがレモン彗星だ!」と視認することはできませんでした。そういう意味では観望は失敗でした。でも画像でレモン彗星の姿をとらえることはできたので、十分満足です。
次にレモン彗星がやってくるのは約1100年後。その頃地球はどうなっているんでしょうか。人類は絶滅しているかもしれません。

これは東の空に見えた月です。月齢10.9。この月は、今日11月5日の夜、スーパームーンとして見えています。
家でもチュウゴクアミガサハゴロモ
2025年11月3日記
11月になり、虫の姿が少なくなってきました。

庭のケイトウにやってきたヤマトシジミです。

調べてみると、この蛾はウスチャヤガのようです。秋に現れるヤガ科モンヤガの仲間で幼虫越冬だとか。

アキアカネ。左右の複眼の反射光がそれぞれ違う色づきで撮れました。

ネコハエトリ。

イエオニグモ。オニグモとばかり思っていましたが、オニグモは腹部の前端に突起があるのだそうです。その名の通り人工的な環境に多い種類だとか。

キバラヘリカメムシ。カメムシ界には美しい種類がたくさんいますけど、その中でもかなりのすてきデザインだと思います。

さて、今回のトピックは、ついに庭にもやってきてしまったチュウゴクアミガサハゴロモです。今年初めて見た種類なのに、早々に自宅でも見ることになるとは。急速に数を増やしているものと思われます。
ミノウスバ成虫
2025年11月3日記

庭のマサキにミノウスバが発生していました。
今年5月にミノウスバの幼虫が大発生していて、葉がすべてなくなりそうな勢いでした。なので仕方なくできる限りご退散願ったのですが、たぶんその生き残りです。なので例年ほどの数ではありませんでした。

こちらは雌。雄は活発に飛び回っていましたが、雌は産卵場所から動こうとしませんでした。

卵の表面に成虫が貼り付けた黒い毛があるのがわかります。このまま越冬し、春先には幼虫になって、マサキの葉を食べ始めることになります。
ミノウスバの成虫には口がありません。これは成虫が純粋に繁殖機能に特化した形態であり、産卵を終えると個体としての役割を終えることを意味します。
一般に「羽化」は新たな生の開始と捉えられがちですが、彼らの生態から見れば、それは最終局面というわけです。蛾の仲間には他にも同様に成虫に口がない種が存在します。生殖という目的のためだけに最適化された、こうした生き物の生命設計の見事さに、深く心を打たれます。

