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時はいくかえりも同じ処を眺めているものにのみ神秘を説く:「ツグミ異変」編

googleで「冬鳥異変」と検索すると、拙サイトの「野外手帳」の記事見出しが3番目に来てしまいます(2012年1月5日現在)。「冬鳥異変」のキーワード検索で「鳥山絵葉書」に来ている方が結構いるようなので、自分でも検索してみた次第です。印象だけで付けたタイトルが、ちょっとでかすぎました。反省。

冬鳥異変

「異変」というのは、2011年の12月野外手帳に何度か書いたように、ツグミをはじめとした冬鳥の渡来数が今季は少なく感じることです。カシラダカも少なく感じます(2012年1月5日現在)。シメには未だ会えていません(2012年1月5日現在)。

私の家の近くだけではなく全国的な傾向であることが、ツイッターのタイムラインから伺えます。ツグミやカシラダカ、シメ以外ではマヒワも少ないようです。逆に、カモなどが減っているという話は聞きません。長野県へのコハクチョウの渡来はむしろ早いくらいでした。

なので、少なくとも「冬鳥異変」ではなく、「ツグミ異変」「マヒワ異変」などと言うべきでした。

「ツグミ異変」で検索すると、やはり各地のツグミの少なさが話題になっていることが分かります。拙サイトはここでも5番目に表示されてしまいます(2012年1月5日現在)。でも「異変だ!」と言い切るようなデータがあるわけではありません。検索して来られた方々、すみません。

ツグミ異変

今季のツグミの初認は11/28でした。しかし、その後ずっと姿を見かけず声も聞きませんでした。12月中旬になるまで、あの「ケケッ」の声を聞くこともなかったわけです。その後もなかなかツグミを観察できない状態が続いています(2012年1月5日現在)。

年末年始の休みには結構自宅周辺を歩いたのですが、ツグミは1羽見るか見ないかくらいでした。3羽に出会えれば増えてきたかも!という感じでした。

ツグミ

1月3日も、自宅周辺を2時間ほど歩いて、この1羽(↑)しか見ませんでした。ツグミは自宅周辺でもたくさん見られるのが常だったので、明らかに観察機会が減っていることを実感します。

でも、感じだけで「異変だ!」と決めつけてはいけないです。わざわざ検索して訪れて下さった方へのお礼とお詫びの意味も込めて、過去の野帳(紙媒体です)をめくって確かめてみることにしました。データと言えるほどのデータではないのですが…。

2010〜2011年:11/3に自宅で初認。その後数を増やし、鳥見では毎回のように確認。
2009〜2010年:11/1に初認(戸隠高原)。里には12月中旬以降は来ていた模様。
2008〜2009年:11/11に自宅近くで初認。11月下旬には普通に観察できている。
2007〜2008年:10/28に初認(戸隠高原)。里での初認は11/20。12月には多数。
2006〜2007年:11/11に自宅初認。12月以降は体調不良で記録なしですが、たぶん例年並み。

きちんと記録していないシーズンもあるのですが、11月初旬から中旬にかけて長野の平地に降りてくるのが例年の状況だと思われます。標高の高いところには10月下旬あたりには渡来してきている感じです。それに比べるとやはり、遅い・少ない。

前回「冬鳥異変」と言われたのは、2005〜2006年の冬です。確か、この年もツグミが少なかったはず。その冬の記録も見てみました。

2005〜2006年:12/15に自宅で初認。12/24に自宅周辺で記録。12/30のページに「ツグミがいない」の記述。

この冬は雪遊びに熱中していて、自宅周辺での観察記録が少ないのですが、「野外手帳」に下記のような記述があるので、里には少なかった分、山にはたくさんいたということになります。

2005年11月初旬:マヒワが忙しく飛び回り、ツグミたちが元気な晩秋の山(飯綱山)。
2006年02月中旬:それにしてもここはツグミだらけ。山にこんなにいれば平地には少ないわけです。今冬のこの異変は何が原因なんでしょう(戸隠高原)。
2006年02月下旬:相変わらず山ではてんこ盛りのツグミです。小川沿いに雪の上を歩いていくと、次から次へと湧くように、枝からケケッと飛び立っていきます。右の写真の中にも、たぶん30羽は写っています(戸隠高原)。

今冬は雪遊びには全然行っていなくて、逆に里での鳥見ばかりですから、単純に比べられないのですが、ツグミが里に来たのが12月、しかもその後増えていないというのは今冬の様子と似ています。

キジとツグミ

ちなみに、その前の冬のツグミ記録も拾ってみると…

2004〜2005年:11月上旬に自宅で初認。
2003〜2004年:10月下旬に初認(志賀高原)。平地での記録はサボっていた感じ。
2002〜2003年:11月上旬に長野市街地で初認。
2001〜2002年:11月上旬に長野市郊外で初認。
2000〜2001年:11月下旬に長野市郊外で初認。
1999〜2000年:初認記録なし。ただし11月下旬には自宅周辺で観察記録。
1998〜1999年:10月下旬に初認(浅間山系)。11月下旬に長野市郊外で落鳥確認。
1997〜1998年:1997年中の記録なし。どうだったかよく覚えていない…^^;
1996〜1997年:10月下旬に初認(浅間山系)。1997年の観察記録多数。
1995〜1996年:10月下旬に初認(信越国境)。1996年の観察記録多数。
1994〜1995年:初認記録なし。1995年には河川敷でよく見ている。
1993〜1994年:初認記録なし。11月下旬観察記録(豊科町:現安曇野市)。
1992〜1993年:初認記録なし。1993年の探鳥先での観察記録はいろいろあり。
1991〜1992年:初認記録なし。11月中旬観察記録(豊科町:現安曇野市)。
1981〜1991年:野帳欠落。
1980〜1981年:初認記録なし。12月中旬観察記録(更埴市河川敷:現千曲市)
1979〜1980年:初認記録なし。10月下旬観察記録(戸隠高原)。里での記録は12月上旬。
1978〜1979年:初認記録なし。11月上旬観察記録(飯綱高原)。
1977〜1978年:1977年はまだ野帳を書いてないです。1978年は多数記録あり。

やはり標高の高いところでは10月下旬には渡来、その後11月中には先陣が里に下りてきて、12月からは数も増えてくるというのが当地でのパターンだと言えます。

これらから、今冬のツグミの出現状況はやはり例年とは違うということが言えると思います。「ツグミ異変」と題してもいいでしょう。これで検索されてもOKです。

ヒヨドリとツグミ

理由が気がかりですが、前回異変の「実績」から、山にいて平地に降りてこないからという推測はできます。前回わんさかいた場所に、スノーシューをはいて行って確かめてみようと思います。

また、赤い鳥系によくあるように、何らかの原因で今季は渡来数そのものが少ないのかもしれません。渡来数が多い冬もあるわけですが、多いときはなぜかあまり心配しないものです。渡来数が増加したシーズンは、その分どこか他の場所で少なくなっているわけです。あまり一喜一憂しても仕方ないと思います。

前回の「ツグミ異変」では、それが次の冬も続いたわけではありませんし。

自然の営みについては、あまりにも分からないことが多いと思うので、天変地異の前触れだとか、異常気象が原因だとか、そんなふうに心配するのはとりあえずやめておきます。ただ、繁殖地に何かあったというと話は別ですが…。

今回、久しぶりに過去の野帳をひっくり返してみて思ったのは、身近な鳥の記録を累積していくのは興味深いということです。

近所の鳥には目もくれず、遠くに行ってばかりの時期がありました。そこで○○を見たというのは、楽しかった、面白かったという思い出のたぐいで、断片的な情報です。それはそれで今の自分にとっても価値のあるものですが、同じ場所で鳥を見続けていないと気づけない、確かめられないことがあるのだと改めて思いました。

「時はいくかえりも同じ処を眺めているものにのみ神秘を説く」

…これは、このサイトでも何回か使っている柳田國男さんの言葉ですが、まさにその通りです。

ただ、説かれている神秘を見つけるだけの眼力がない…。

2012年1月はじめ記

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