自由研究
ヒョウモンチョウとコヒョウモン(翅表編)
ヒョウモン系は難しいという記事を書いたのが2014年。もう11年も前です。
その頃に比べると、ヒョウモン系のよく見かける種類については、自分で言うのもなんですけど、結構識別力が向上してきて、迷うことは少なくなりました。
見る機会があるヒョウモン系の中で、今課題となってるのは、表題の「ヒョウモンチョウ」と「コヒョウモン」の見分けです。
両方とも数が多いチョウではなく、特にヒョウモンチョウは準絶滅危惧種なので、普段見る機会はないのですが、場所によっては時々混ざるので、その場で見ただけではわからず、写真に撮ってきて家で検討することになります。
毎回毎回どうだっけ?と調べるのも何なので、まとめページを作ってみることにしました。この8月に撮った写真で以下比較してみます。
ヒョウモンチョウとコヒョウモンは図鑑には「極めて酷似」とあり、決定的なポイントはなく、総合的に判断して識別する必要があるということです。
翅表の識別ポイントとして挙げられるのは、主に以下の点です。
1 黒斑:ヒョウモンチョウは小さめ、コヒョウモンは大きめ。
2 前翅後角2黒斑:ヒョウモンチョウは分離傾向、コヒョウモンは融合傾向。
3 前翅内縁中央黒斑:ヒョウモンチョウは中間、コヒョウモンは内側寄り。
4 前翅外縁:ヒョウモンチョウは直線的、コヒョウモンは円み。
5 前翅後角:ヒョウモンチョウは直角に近く、コヒョウモンは鈍角。
1 黒斑
ヒョウモンチョウは小さめ、コヒョウモンは大きめ。
印象としては「b」の方が黒斑が大きく、全体的にはより黒っぽく見えます。従って、「a」がヒョウモンチョウ、「b」がコヒョウモンと思われます。
ただ、こうして比較してみるとわかるレベルの話で、現場で判断するのは難しいなと感じます。
2 前翅後角2黒斑
ヒョウモンチョウは分離傾向、コヒョウモンは融合傾向。
現場でも割と視認しやすいポイントです。「a」は分離傾向なのでヒョウモンチョウ、「b」は融合しているのでコヒョウモンとしてみました。
ただ、「a」が分離しているのかというと「b」に比べてそうだと言える程度で、「a」だって2つの黒斑がくっつきかけているとも言えます。判断材料の1つにしかならないですね。
3 前翅内縁中央黒斑
ヒョウモンチョウは中間、コヒョウモンは内側寄り。
この写真ではどちらもやや外寄りに位置しているように見えます。「b」のコヒョウモンと思われる個体は、内側寄りがコヒョウモンだとすると、完全に外れています。なのでこれで識別できることもあるというポイントだと思います。
4 前翅外縁
ヒョウモンチョウは直線的、コヒョウモンは円み
この画像ではどちらも同じように見えますね…。
ただコヒョウモンならではの円みがはっきりわかるケースは多く、私にとっては有効な識別ポイントだと思っています。そして「b」が円く見えるとすれば、、下の前翅後角の角度が関係しているのかもしれません。
5 前翅後角
ヒョウモンチョウは直角に近く、コヒョウモンは鈍角。
これまであまり気に留めていなかったポイントなのですが、もしかしたらこれが一番わかりやすいかもしれません。「a」は直角に近いのでヒョウモンチョウ、「b」ははっきり鈍角なのでコヒョウモンとしてみました。
そして上の4で書いたように、ここが鈍角だと、前翅外縁がより円く見える可能性があると感じました。
展翅された標本ではかなり違って見えるようです。ただ野外では撮影の角度によっては紛らわしくなりそうです。なので真上から撮った画像で検討する必要があると思います。
まとめ
という訳で、ヒョウモンチョウとコヒョウモンの比較をまとめてみました。改めて感じたのは、図鑑にあるように総合的な判断が必要だということです。
翅の裏側については、見る機会が少ないコヒョウモンのいい画像が今回はないので、いつかの機会にまとめてみたいと思います。
ヒョウモンと名前のつく蝶はたくさんいるわけですが、ツマグロとかミドリとかウラギンとかの修飾語がつかないヒョウモンチョウは、ヒョウモン系の基本種として扱われていたのでしょうか。
そのあたりをAIに聞いてみたらとんでもない答えが返ってきました。
「残念ながら、ヒョウモンチョウという名前の蝶は日本の図鑑には存在しません。ヒョウモンチョウという名前で呼ばれることがある蝶はいくつかありますが、いずれも正式な和名ではありません」
AIからその存在が見えないほど、この蝶は少なくなってしまっているようです。草原性の蝶はこのヒョウモンチョウに限らず減少傾向が著しいそうです。今後はますます見る機会が減るかもしれません。これからも彼らの生きる環境が保全されることを願ってやみません。
2025年8月記
