過去の野外手帳
-2009年4月
カタクリの尾根
芽吹きの始まった山を行きます。メジロがわんさかです。
小さな谷を挟んだ向こう尾根からはオオルリの声が響いてきました。
急登を乗り切ると本日のお目当ての一つ、カタクリの尾根。
びっしり見事な群生というわけではありませんが、
この空間を独り占めできるのは本当に贅沢であります。
花期はこれからが本番という感じでした。
稜線はまだ冬の装いが残っていました。
いつの間にかメジロも姿を消し、静かな道です。
細かなアップダウンに体力が削られていきます。最近、衰えを感じるなー。
冷たい風が吹く尾根を外れてジグザグに下降を始めると、
再び芽吹きの色が目にはいるようになりました。
顔にまとわりつくムシムシを手で払いつつ、春の領域に戻っていきます。
麓では桜が見頃でした。
無事歩き通せたことにほっとしながら駐車地点まで戻ります。
春ならば、退屈な車道歩きもまた楽し。
2009年4月おわり記
4月中旬花見鳥見
息子は手袋をして自転車に乗って部活に出かけた肌寒い土曜日でしたが、日中は暖かくなりました。
今日はリビングのワックスがけなんだけど、陽気のよさにそわそわ。
ワックスが乾くのを待つ間、少し時間をもらって花見鳥見。 まずはタチツボスミレ。本当に春らしい色だと思う次第です。
森の中は芽吹きが始まっていて、明るく柔らかい色に満ちあふれていました。
ヤマガラがゆっくりと囀り、メジロが飛び交う梢を見上げながら歩きました。
「すぐ戻るから」といって出てきたのですが、やっぱりちょっと無理そうです。
ウグイスは一個体だけさえずっていました。やっぱりウグイスはいいですねぇ。本当に春って感じがします。
センダイムシクイの声を聞きましたし、長野では夏鳥のアカハラも鳴いていました。これから山に向かって移動していくのでしょう。
戸隠にもそろそろ行ってみなくてはなー。
まだ冬鳥も健在。
シメが道をひょこひょこと採餌しながらすぐ近くまでやってきました。
最後は「あれ、人間がいるー!気づかなかったー!!」という感じで飛び去りましたが、こちらは隠れもせず、ただ道に立っていただけ。もうちょっと警戒心を持った方がいいと思います。
ツグミもいました。
メジロとともに多かったのはヒヨドリ。盛んに吸蜜していました。
そのほかの登場メンバーは、コゲラ、アオゲラ、キセキレイ、シジュウカラ、エナガ、ホオジロ、カワラヒワ、スズメ。
自宅周辺よりちょっと標高が高いだけですが、桜の散り方はずいぶんちがいます。ここはまだまだ見頃でした。
結局かなりしっかり鳥見して家に帰りました。双眼鏡もカメラも持って出かけたので、確信犯ではありました。すみません。
2009年4月おわり記
寒風の河原
この春中学生になる息子と千曲川に行ってみましたが、あまりに寒くて早々に退散しました。ぶるぶるです。
泥の上には、これは後指がないのでチドリの足跡でしょうかね。イワツバメ初認です。これも3月終わりの話。
2009年4月はじめ記
まだ冬の色
でもジョウビタキ以外に冬鳥の姿はなく、かわってウグイスがホケキョと鳴いていました。春はいいですね。3月終わりの灯台もと暗しの森。
2009年4月はじめ記
トキ週間
ご無沙汰していました。1ヶ月前の鳥見は、長野県にやってきたあのトキでした。信濃町を経て、長野市東部にご到着でありました。
◆3月最初の月曜日
本州に海を渡ってトキが飛来したというニュースにも驚きましたが、長野にまで飛んできたことにはとにかくびっくりしました。そして、改めて翼を持つ生き物の移動能力の素晴らしさに感動してしまいました。
長野県でトキが見られたのは大正時代以来83年ぶりなんだそうです。
トキの話はこれまでどこか人ごとでしたが、今回この個体がやってきたのは自宅から数キロの場所。
日本産トキが2003年に絶滅して以来、もう野生のトキを見ることはあり得ないと思っていました。放鳥された個体とはいえこれ以上に珍しい鳥はいない訳で、一度でいいから見てみたい。でも月曜日はただそう思っていただけ。
◆火曜日
出勤前にその場所に寄ってみることは十分可能でした。でも、もう移動してしまったかもしれないし、大体あの辺りの農道は結構複雑だし…と、この日もトキを見に行くつもりはありませんでした。
◆水曜日
トキは木島平に移動とのニュース。やっぱり飛んでいってしまったかと残念に思いましたが、ほっとした気持ちにもなりました。再び北東方向へ飛び去ったということだったので、次はどこへいくのやらと思っていました。
◆木曜日
予想に反して今日も木島平にとどまっているトキ。
ニュース映像からあの辺りだなあと、大体の場所の見当がつきました。少し遠くはなりましたが、まだ自宅から車で数十分の距離です。
でも、まさか仕事休んで見に行く訳にも行かないしねぇ。
◆金曜日
まだトキは木島平に滞在中。
たまたま早めに帰宅できたので、夕方のローカルニュースを見ていると、役場や環境省の方が農道の封鎖をして、人が近づかないようにしていることを知りました。
人出はそれなりにあってもトキはさほど気にしていないようだし、このまま定着する気配さえある。
明日は休日だけど、これなら車を止める場所のマナーに気を付ければ大丈夫じゃね?と、都合のよい論理を、ウィスキーを飲みながらじわりじわりと構築していきました。
◆土曜日
午前中は行くか行くまいか悶々としていたのですが、ついに昼過ぎ木島平にふらふらと向かってしまいました。
これまで珍鳥をめぐる混雑はなるべく避けてきたのですが、昨日のウィスキーが効いてしまったようです。。
この日の人出は500人!とニュースは伝えていましたが、もちろんこれは延べ人数。私が行ったときには数十人ほどの方々が二手に分かれて集まっていました(写真上下)。思ったよりずっと少なくてちょっと拍子抜けでした。
もちろんバーダーもいましたが、多くは地元の方と思われる人たちで、時々話題になる迷子のアザラシやラッコ見物みたいな感じ。
現場にいたのは15分ほどでしたが、報道にあったようなマナーの悪い方は見かけませんでした。トキまでの距離は100mほど。声を潜めて皆さんひっそりと見入っていました。
おお本物だー!動いているー!というような、有名人を生で見たような第一印象。
サギよりはずっとがっちりした感じ、立派な冠羽を揺らしながら歩く姿。そしてやっぱりあの鴇色が心に残りました。
飛ぶところは見られなかったのですが、それは贅沢が過ぎるというものですよね。
明治時代までは全国各地で見られた普通の鳥だったはず。世界的珍鳥という背景から来る独特の存在感はありましたが、北信濃の農村風景には違和感なくとけ込んでいるように思いました。
ずっと餌を採っていました。このあたりは有機農法に力を入れていて、ドジョウなどの餌が豊富なのだとか。そういう場所をトキがどうして見極めることが出来たのか。不思議です。
◆日曜日
朝、トキは十日町へ移動してしまったとのこと。絶妙のタイミングで見に行ったことになります。
残念ながら長野県に定着とはなりませんでした。その後の新聞報道で、「トキの周りに人が集まりすぎて定着を阻んでいることも考えられる」という研究者のコメントを見たときは、ちょっと自己嫌悪に陥りました。人がたくさん来た土曜日を境に移動していますし。
以前は稲の苗を踏み荒らし、害鳥とされていたこともあったとか。もともと人に近い鳥だったようです。今回も広い水田ではなく、人家の近くで採餌していました。庭先を歩く姿を、縁側からその家の方が見ている写真も新聞には載っていました。
すぐ近くの自動車修理工場では、トキの飛来以来、驚かせてはいけないと仕事を休んでいたそうですが、逆に言えば、その程度の音はそれほど大きな問題じゃないってことです。
里に住んでいた人間の生活に寄り添っていた鳥が、ここ100年ほどの間に一気に絶滅への道をたどってしまったことに、改めて怖さを感じました。
2009年4月はじめ記
◆追記
先日、野鳥の会長野支部報が手元に来まして、当日はボランティアの方々が詰めていたことを知りました。整然とトキ見物ができたのはこうした方々のおかげでありましたことを書き記しておきます。
2009年4月おわり記