過去の野外手帳 -2004年6月 | ||
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◆台風セピア 長野では多少雨風が強かった程度で、台風は遠のいていきました。すこしほっとして、雲の動きや形を楽しみながら運転。 7時過ぎ、家に着く頃、あたりはセピア色に包まれて、なんだか異様な雰囲気です。 デジカメ持って例の(↓)あぜ道へ。何枚かシャッターを切りました。右の写真、トリミングしただけで、色は何にもいじっていないのです。 ふと見れば、自分の手もセピア色に染まっていました。全てのものが自分の色を失って、空に支配されていました。 2004年6月おわり記 ◆インチワーム 高原の木の幹にはアリ各種、毛虫各種、尺取り虫各種。 尺取り虫、英語でも“inchworm”っていうんですね。同じような感覚なんでしょうか。動きがなんともかわいくて、ずっと見ていました。 シャクトリムシって農家や園芸家にはとてつもなく悪い虫なんだそうですけど、私にはカワイイ芋虫にしか見えません。 鳥だって、ムクドリは果樹農家に、スズメは稲作農家に忌み嫌われているのが現実ですけど、私にはやっぱりカワイイ椋ちゃん、雀ちゃんにしか見えません。 世の中は難しいと思いながらシャッターを押しました。 2004年6月おわり記 ◆決着つかず 夕方の山道をのんびり走っていると、アスファルトの上に小さな鳥の姿が見えました。車を停め双眼鏡で見れば、キセキレイのオスとオス。 なわばりの境界なのでしょうか、お互い視線は合わせていませんでしたが、強烈に意識しあったまま固まっていました。実力伯仲の2羽。 さてどうなるか…と、フロントガラス越しに観戦を決め込んだのですが、やがて向こうからやってきたオートバイに勝負は中断、彼らは波を描いて飛び去っていきました。 2004年6月おわり記 ◆涙が出そう2 失われる思い出の風景。 今朝はキジがケーンケーンと鳴いていました。カミさんは、この間立派なオスを見かけたそうです。彼の居場所もなくなることになります。 下↓で写真倉庫を見返したのですが、野外手帳とトップイメージからも、消える田圃とあぜ道で撮った写真を拾ってみました。思いの外少なかったです。 野外手帳では、ヒメオドリコソウなど外来種に支配された春(2003/03)、防鳥網にかかったモズ(2003/09)、お手軽マクロレンズで撮った動かないバッタ(2003/10)、スノーシューで近所を歩いたこと(2003/12)、そして夕焼けカレー(2004/06)。 トップは写真倉庫との重複が1枚(2003/06)、岩菅とリンゴの花(2004/05)だけでした。 残された時間は長くないので、もっとたくさんのことを感じておきたい今日この頃です。 2004年6月なかごろ記 ◆涙が出そう 自宅の東に広がっていた田圃とリンゴ畑、未舗装のあぜ道が、消えてしまうことを知りました。 自宅周辺はかなり前から区画整理が進み、農地が宅地に変わってきていました。ですが、東側には自分の小さな頃から変わらない風景が残っていました。そして、それは小さな幸せでした。 でも、唯一残っていたそれも、失われることになりました。 右は、その場所で撮って写真倉庫にアップしてきたものです(リニューアル時に取り下げたもの・これからのアップ分も含みます)。 冬には区画整理の工事が始まるそうなので、この雪景色はもう見られません。下の「夕焼けカレー」の風景も消えてしまいます。 こうして眺めているだけで、寂しくて寂しくて、本当に涙が出そうです。 私と同じように、息子達もこのあぜ道でたくさん遊んできました。遊べる時期があって、記憶に残るだけでも良かったのかもしれません。 感傷的な夜です。 2004年6月なかごろ記 ◆コノハズク鳴く森へ いそいそと退勤。今夜はFatman。さんの案内で、コノハズクの声を聞きに行くのです。待ち合わせ場所の集合時間には間に合いそうもないので、直接、雑魚川林道を目指しました。 空が色と光を失う頃、奥志賀に入りました。心は浮き立っていたのですが、どこまでも暗い森に、しめつけられるような不安感を感じはじめます。 機械の力にまかせて山の奥に入っていくことも、気持ちいいものではありません。実際には、車が故障したってなんとかなると思いますが、夜の森の力なんでしょうか。 現地到着。はじめまして、と挨拶。Fatman。さん、同行の方々と林道でコノハズクの声を探します。白い息を吐きながら黒い梢を見上げ歩いていると、微かにその声が聞こえてきました。 不安に支配された人間には真っ暗にしか見えない森でしたが、そこにはちいさなちいさなフクロウが、たくましく生きているんだってわかりました。 神秘的な声は遠く近く、目を閉じて立っている私を夜の森に誘いました。私には闇の中で、コノハズクの口がブッポウソウと動いているのが見えた気がしました。 2004年6月なかごろ記 ◆ブナの森レポート 下の記事の追記です。 左上は、いわゆる根曲がりのブナです。雪の重さと戦い、幹が曲がったばかりか、背中も平らに押しつぶされてしまっていました。 右上は、雪にのしかかられ、幹を割られたブナです。それでも、彼らは上に伸びていくのですね。 左下は、ブナの樹冠を見上げて撮った写真です。命を形に表せばこうなるのだろうかと感じました。 同じ様な写真を200枚くらい撮ってきてしまいましたが、なんだか、撮らずにはいられませんでした。 右下は、樹齢推定300年のブナの幹です。幹周は5mを超えます。圧倒されて、言葉を失いました。 2004年6月はじめ記 ◆1ヶ月ぶりに山登り まだ、完全に体調がよくなったわけではないのですが、快晴の休日。山好きの虫がうずきます。そこで、無理なく歩けそうな、穏やかなブナの山を歩くことにしました。 家を出たのが9時過ぎだったので覚悟はしていたのですが、駐車スペースは埋まっていました。やむなく他の車に倣って路駐。この春はマイナーな里山をさまよっていたので、人の多さに一瞬ひるんでしまいました。 積雪地の森らしくクロジが盛んに鳴きます。コルリの青い背中、ホトトギスの叫び、ミソサザイの華麗な歌声を楽しみながら、緩やかな道を登っていきました。 家を出るのが遅かったのが幸いしました。たくさんの人とすれ違いましたが、あっけなくついた山頂は私を含めて3人の静かな空間。 新潟から来られたご夫婦と少しばかり話をしました。「新潟にもいい山あるよ、まだ若いんだから飯豊とかどう?」と言ってくださいました。 山に行くと、人生1/2に差し掛かっていても「若いオニイチャン」になってしまうのは、うれしいやらなんやらなのです。 2004年6月はじめ記 ◆夕焼けカレーの味 帰宅するとカミさんと息子達がカレーを食べていました。 「夕焼けすごいよ!外に出てみなよ」 「でももう食べているし…」 「カレーと夕焼けと、一体どっちが大事なの!」 「どっちが大事って…」 あとでよく考えるとおかしな台詞ですが、ともかくも家族を外に追い出しました。 「どこまで走るの!?」 普段と違う鋭い?動きに息子がいぶかるのも構わず、田圃に飯縄山と空とが映るあぜ道まで小走り。素晴らしい夕焼けの命は短いのです。 夕焼けを見せたいと、家族を外に連れ出したものの、結局は独りよがりの行動を後でちょっと反省。数十枚、夢中でシャッターを切ったところで、デジカメの電池が切れました。 それからほんの5分ほどで空は色褪せ、満足したオトウサンは、家に戻ってカレーを食べました。 2004年6月はじめ記 ◆森を散歩 夕方、ちょっと空いた時間を見つけて戸隠の森を歩きにいきました。 夕暮れ迫る時間帯でしたが、アオジやノジコ、キビタキ、クロツグミが迎えてくれました。 一応お目当てだったのはアカショウビンの声でしたが、空振り。 でも、いいんです。こうして静かな森をふらりふらり歩くことさえできれば(負け惜しみ20%)。 顔のまわりにまとわりつく虫が少々うっとうしいシーズンになりました。牛の尻尾が欲しいです。 2004年6月はじめ記 ◆オジサンと男の子の小さな物語 先月の話ですけど、いただいた情報をもとにフクロウを見に行きました。 でも、割とこういう時ってだめなんです。影絵のようなアオバズクは見たものの、ムクドリの糞の直撃を受けるし、フクロウには結局会えないし。 境内を双眼鏡持ってうろうろしていると、近所の3・4歳?の子どもが、お菓子食べながらくっついてきました。興味津々という感じで、双眼鏡を上に向けるたびに、いっしょに見上げたりしているのです。「フクロウ探しているんだ」と言うと、家に戻って、パパが撮ったという仔フクロウの写真とベイブレードを持ってきてくれました。 一生懸命ベイブレードについて語っている彼の意向を無視して、今もフクロウ鳴いているの?と聞いてしまったのですが、「赤ちゃんフクロウはもうお山で寝ているんだよ」と答えてくれました。 本当かどうか定かでない”情報”なのですが、その時はああそうなんだと納得して、「じゃ、オジサン来年来るね」と、神社を後にすることにしたのでした。 車に乗りこむまで少し歩く間も、いろいろフクロウの話をしてくれました。手を振ってドアを開けると、遠くでお母さんでしょうか、彼の名前を大きな声で何度も呼んでいました。怪しい知らないオジサンについていってはいけませんものね。また来年ね。 2004年6月はじめ記 |
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