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野鳥フラッシュ撮影綺談

この話は「綺談」の名の通り、「フィクション」としてお読み下さい。

またやってしまった

掲示板は、毒のないオシャベリの場でなければならないという原則を、またも踏み外してしまいました。

とある画像掲示板に貼られた、夕暮れ時、着水しようとしている鳥にフラッシュ(ストロボ・スピードライト)を浴びせた画像が目にとまりました。
背景がある程度写っているので、遠くから望遠レンズで撮った写真ではありません。鳥は全長が長辺の半分程度に写っているので、結構近くからバチッと撮っています。こんな感じでした。↓

カモにフラッシュイメージ

この投稿に対して「賛成できません」と書いてしまったのです。
進歩がないです。前置きとして、「問題はないかもしれませんが―」と書いてみまして、ここは前回より進歩した部分ですが。ちなみに、前回の「賛成できません」はこちらです。

掲示板の管理者は信頼できる方でしたし、投稿者も、何度か掲示板でやりとりのあった方だったので、きっとどこかに分かってもらえるという「甘え」があったんですね。
でもやっぱりスルーすべきでした。管理者の方にも迷惑をかける結果になってしまいました。

実は問題ないかもしれない

フラッシュの使用が野鳥に悪い影響を与えるのかどうか、本当のところはよく分かりません。結構大丈夫じゃないの?という話はありますし、絶対に許せないマナー違反だという人もいます。

私の「賛成できません」に対して、フラッシュが写し出す世界は貴重な生態・行動の資料であるという返信をつけて下さった方がいました。それは同感です。

まだ中学生だった頃、嶋田忠さんの「カワセミ 清流に飛ぶ」に出会いました。フラッシュを駆使して、水中での動きをも捉えた写真は衝撃的でした。宮崎学さんの「けもの道」、「フクロウ」も、肉眼では見えない世界を描き出した素晴らしい作品だと感じました。

宮崎学さんの「森の365日」(1992年:理論社)や「野生に生きる」(1992年:毎日新聞社)を読みますと、フクロウをだんだん光や音に慣らし、谷全体をスタジオ化して撮影されたことが分かります。フクロウはまるで警戒心を持たなくなったということなので、環境の変化に適応できるたくましさを、鳥たちは持っているのだろうと感じます。

なので、鳥が慣れてしまえばフラッシュは問題ではないと、考えることができるかもしれません。

でもやっぱり問題あるかもしれない

例えば田んぼのスズメよけにはきらきら光る赤銀テープが使われます(長野だけじゃないですよね?)。光の反射を利用した防鳥用品はたくさん見られます。
慣れてしまえば防鳥効果は落ちるのでしょうが、こうしたグッズが実際に使われているのだから、基本的に鳥は光り物は苦手なんだろうな…という想像は自分なりにしてきました。

赤銀テープ

また、種類や場面によっては慣れてくれないこともあるでしょう。営巣場所に張り付いたカメラマンがフラッシュを発光させて、営巣放棄につながってしまったという話は、「フラッシュ 営巣放棄」で検索すればたくさん出てきます。

営巣放棄が起こるのは、巣への接近や長時間の張り付きなどが原因で、フラッシュ使用はその付随行為です。なので、フラッシュを悪者にしていいのか分かりませんが、フラッシュ撮影はよくないと考えておいたほうがいいのだろうな…という想像は自分なりにしてきました。

あと、動物園ではフラッシュ使用が禁止されているところが多いです。動物たちのストレス、体調の悪化につながるという理由のようです。
ヒトがわんわん来ることもストレスになるはずなのですが、それ以上にフラッシュがストレスになる可能性を動物園は心配しているってことです。
一日中ピカピカやられれば確かにおかしくなりそうですが、逆に言うと一日中、毎日フラッシュに接しても慣れない種類や個体がいるってことなのでしょうか。

先日、残念なことにアカカンガルーのハッチが死んでしまったのですが、その須坂市動物園日記から引用しますと、

-----以下引用
動物たちの赤ちゃんの育成期や夜間など各獣舎の状況や各担当者の判断で以前からフラッシュ撮影をしないようお願いしてきましたが、写真撮影時の多くのフラッシュの光は、動物を近くで見せるという観点で飼育している須坂市動物園において、育成中の動物の目への影響や飼育動物たちへの刺激が強いことから1月を以ってフラッシュを点灯しての撮影を禁止させていただきました。現在、全国的に動物園の注目が集まったことでここで「エサやり」の禁止に続き、最低限のマナーとして「フラッシュ撮影の禁止」も周知していただき、実践していただこうと考えております。
-----引用ここまで

ということです。
webであちこちを読んでみると、動物の近くでは、または動物の瞳孔が開く薄暗い飼育舎内ではフラッシュを禁止したいというのが動物園の基本姿勢のようです。
目に頼る度合いの少ない哺乳類がそうなのだから、視覚を高度に発達させた鳥類に、近くから、また薄暗い状況でフラッシュを使うことはやっぱりあまりよくないだろうな…という想像は自分なりにしてきました。

フラッシュ撮影禁止

つまり、よく分からないし、大丈夫かもしれないけど、悪い影響を及ぼす可能性があるし、しかも至近距離で、薄暗い時間帯の撮影でしたから、フラッシュは使わないでみたら…というニュアンスで、「問題はないのかもしれませんが、基本的には賛成できません。みなさんはどうお考えですか?」と書いちゃったわけです。

そのニュアンスを伝えるには言葉足らずだったと後で反省しましたが、この時点ではそれ以上突っ込むつもりはなかったんです。

私も賛成できません!

画像投稿者から返ってきた言葉は、意外なものでした。

・私も野鳥のフラッシュ撮影には賛成できません
・その理由は被写体に悪影響があるからです。
・でも一番の問題は写真が不自然になることです。
・できればフラッシュなんて使いたくないです。
・至近距離でフラッシュを焚かれる虫のほうが嫌でしょう。

勝手に要約するとこんな感じのお答えでした。

「私も賛成できない」と返ってくるとは思いませんでした。そして、そう自分でも思っているのに、こんな近くからバチッと焚いちゃったの?というのが率直な疑問・感想・意見でした。

「ディフューザーを使っている」とも書かれていたので、おそらく外部フラッシュを使ったのでしょう。つい内蔵フラッシュをポップアップしちゃたのとは違い、最初から使う気満々、準備万端だったということになっちゃいます。
ディフューザーを使うことでまぶしさを抑え、鳥には“気を遣った”と言いたいのかな??と想像しますが、“使ったのは大光量の外部フラッシュだった”というオチのようです。

外部フラッシュ

だから、本心は「そこ」にはないのだとすぐ分かりました。こういうの嫌いだなと思って、「じゃ、フラッシュ使わなければいいじゃないですか」と、意地悪く反論してしまいました。これは失敗でした。案の定、スレッドごと削除されてしまいました。

この方が、フラッシュを使いたくない一番の理由は、「不自然な描写になること」ですから、話がかみ合わなくなることは目に見えていました。突っ込んでしまった私が悪いです。削除されたのは仕方ないというか、当然ですね。

写真は恐ろしい

鳥の名前はかなり知っている方だなという印象がありましたが、基本的には「写真の人」。でも、フラッシュを使うのはよくないと思っていたんですよね。

よくないと思っていても、いい写真を撮ることの方が大事になってしまう。「写欲」が勝ってしまう写真の恐ろしさを、ここでも見ました。アカショウビンの話とおんなじです。

これまで書いてきたように、野鳥撮影でのフラッシュ使用に私は否定的ですが、使うなと強く主張するつもりもありません。そこは賛否両論あるところだと思います。
ただ、写真を撮るということが、いかに人の判断力を奪うものであるかは、今回のことでもよくわかりました。カメラを持つときにはそれを自覚しなくてはいけないと、改めて思うのでした。

昆虫はフラッシュが嫌いなの?

個人的には、この方の「昆虫もフラッシュは嫌い」という説にとっても興味があったんですが、その質問もまとめて削除されちゃいました。

スレッドが消える前、私の投稿に対して「野鳥の気持ちになってみるとやっぱり…」とコメントをつけて下さる方もいましたが、鳥の気持ちはよく分かりません。状況証拠をもとに、自分の想像を勝手に重ねてみただけです。私の意見は、「疑わしきは使わず」であるというだけのことです。

ましてや、昆虫がフラッシュを「嫌」なのかどうか、そんな「感情」まではとても分かりかねます。発光をコミュニケーションに使っているホタルに使えば問題なのは分かりますが、他にフラッシュ撮影が昆虫に「嫌」という感情を引き起こしていると想像できる例はあるのか、ぜひ知りたいと思っています。
いや、マジで。

2009年12月記

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