自由研究
鳥の名の色
夢の中で「あのサギ色の服を着た男の子」というフレーズが出てきて、目が覚めたあともその「サギ色」という言葉を鮮明に覚えていました。
サギの仲間は和名に色が使われている例が多いです。
コサギ、チュウサギ、ダイサギは「シラサギ」と総称され、つまり「白い」サギ。
白いのもいるけど黒いのもいるので、クロサギ(白いのにクロサギだから詐欺とか言わないようにしましょう)。
アマサギは亜麻色だからアマサギだと思ったのですけど、「鳥名の由来辞典」柏書房(2005年)によると飴色由来らしいです。こうしてみると確かに飴色鷺でないとおかしいです。
飴色(あめいろ) #deb068
亜麻色(あまいろ)#d6c6af「亜麻色の髪の乙女」ってこんな色の髪なのか…。
アオサギは、英名(gray heron)のように灰サギでもいいと思うのですけど、一応背中が灰青色なのでアオサギ。灰青(はいあお)#c0c6c9を調べてみるとこれはまさにアオサギの色でした(ハイサギよりハイアオサギでした)。
あとムラサキサギもまあ紫色に見えないこともありません。英名はpurple heronなので直訳なのでしょうか。ちなみにpurpleは#800080と#9b72b0があって後者のほうがムラサキサギのイメージに近い気がします(実物は見たことがありませんけど)。
もっとも、鳥の和名に色の名前が使われるのはごくごく普通のことです。でも逆に、鳥の名が色の名になっている例はそう多くはないだろう?と思いました。
すぐに思いついたのは鴇色(ときいろ)です。
それから鶯色(うぐいすいろ)、鳶色(とびいろ)。鳶色は、アリスの歌(君のひとみは10000ボルト)でしか聞いたことがないですけど。検索したらサザンオールスターズの「愛はスローにちょっとずつ」にも鳶色の瞳って出てくるそうですけど、知らないです。
続いて思いついたのはピーコックグリーン。クジャクですね。
自力で思いつけたのはこの4色くらいだったのですが、調べてみるとけっこうあったのでした。
まず鴇色(朱鷺色:ときいろ)。調べてみるといろいろな鴇色がありますが、「原色大辞典」のカラーコードを採用すると#f4b3c2です。こんな感じ。
鴇浅葱(ときあさぎ)#b88884とか
鴇鼠(ときねず)#e4d2d8もありました。
こうしていくつかの色の名前として残っている鳥が絶滅してしまったのですから、身近な鳥がそこまで追いやられてしまった事実を改めて残念に思います。
続いて鶯色(うぐいすいろ)。カラーコード#928c36。自分のモニタだとわりと本当のウグイスにまあまあ近い色に見えます。
これも鶯色#71714a、これはかなり本物に近いイメージです。
鶯茶(うぐいすちゃ)#715c1f
もうひとつ鶯茶(うぐいすちゃ)#70613a
ウグイスは鶯色ではなく、鶯色の鳥はメジロです!という説明をする人がいます。もっと鮮やかな緑のイメージを持っている人が多いので、生まれた説明だと思います。そのイメージは、うぐいす餡やうぐいす餅あたりから来ているのかもしれません。そういえば最近うぐいす餡のあんパンって見ない気がします。
それから鳶色(とびいろ)です。カラーコードは#95483f。トビの色とはかなり違う印象です。
鳶色も派生色といっていいかどうかが結構多くて、
紫鳶(むらさきとび)#5f414b
黒鳶(くろとび)#432f2f
紅鳶(べにとび)#9a493fもありました。
ワシ・タカの中ではかなり平凡なイメージのあるトビから、これだけ多くの色が生まれているのは興味深いです。オオタカの背中の色とか、色名としてあってもおかしくないのにと思ってしまいます。
意外にバリエーション豊かなのが鳩です。
山鳩色 (やまばといろ)#767c6b山鳩ってキジバトのことだとするとこれは納得できません。色の名前の由来としての山鳩はキジバトではないのかもしれません。
鳩羽色(はとばいろ)#95859c
この鳩羽色#675d7e もありました。
鳩羽鼠(はとばねずみ)#9e8b8e
鳩灰#9ec8da(中国の伝統色)
小鳩黄#efe7ab(中国の伝統色)。
ピジョンブルー#88b5d3
鳩はこんな感じです。どちらかというとカワラバト系の色っていうイメージです。
あと鶸(ヒワ)もありました。
鶸色(ひわいろ)#d7cf3a色合いからしてカワラヒワやマヒワっぽいです。
鶸茶(ひわちゃ)#8c8861も。
そして鶸萌黄(ひわもえぎ)#82ae46
カラスはこの2色。まず烏羽色(からすばいろ)#180614やや紫がかった黒です。
それから濡羽色(ぬればいろ)#000b00、これはかなり真っ黒#000000に近いです。ほんの少し緑に振った黒です。
雀は身近な鳥だったはずですが、色としては
雀色(すずめいろ)#864337
雀茶(すずめちゃ)#aa4f37だけでちょっと意外。
他にも日本人にとって馴染みが深いだろう燕とか雉とか鷲とか鷹とか調べてみたのですが、見つかりませんでした。
鶴はありましたが、火鶴紅#e68ab8だけでこれは中国の伝統色。
鷺(サギ)どころか鶴もないとは。なぜ鴇(トキ)、鶯(ウグイス)、鳶(トビ)、鳩(ハト)、鶸(ヒワ)に偏っているかが謎です。カラスが2色しかないのはまあ仕方がないと思います。
鴨で見つけた3色のうち、2色は中国の伝統色でした。
鴨の羽色(かものはいろ)#00695b
これは万葉集にも登場する色だとか。
黄鴨色#874521(中国の伝統色)
鴨蛋青#e6fffd(中国の伝統色)
鵲灰#455667(中国の伝統色)。鵲はカササギです。
鳥の子色(とりのこいろ)#fff1cfこれは鶏の卵の殻の色が色名の由来らしいです。
鳥羅松紅#c80926、これも赤色野鶏っぽい色で中国の伝統色です。
あと忘れてはいけないのはカワセミです。カワセミを漢字で書くと翡翠ですが、私はてっきり宝石が先でそれに似た色の鳥としてこの字が当てられたのかと思っていましたが、どうも逆のようです。
ちなみに日本の翡翠色(ひすいいろ)#38b48b
中国の伝統色としての翡翠#015437
ここで欧米系の色もいってみましょう。
まず、鳥の名の色としてすぐ思いついたピーコックグリーン#00a497です。カワセミっぽい色でもあります。
ピーコックブルー#009e9fも発見。
単にピーコック#00586dもありました。
ここで再び中国系のクジャク色。
孔雀#00a15c(中国の伝統色)
粗孔雀緑#028255(中国の伝統色)
孔雀石#22c32e(中国の伝統色)
孔雀藍#00808c(中国の伝統色)
もうひとつ孔雀藍#0505d3(中国の伝統色)
クジャクだけでもこれだけありました。
欧米に戻って、フラミンゴピンク#f5b2ac
フラミンゴ#ef8865
パロットグリーン#37a34aを発見しました。パロットはもちろんオウムです。
カナリヤ(canary yellow)#fff462も ありました。
漢字表記の金糸雀色(かなりあいろ)#ebd842だと少し変わってこうなります。
アメリカの伝統色のページを見つけたのですが、日本やヨーロッパの色の名前に比べるといい加減というか、大雑把なんですよね。アメリカン〇〇とかエンパイア〇〇とか出だしが同じで何種類もあるのです。ホークアイ〇〇だけで4色ありました。
ホークアイ レッド#e3003d
ホークアイ イエロー#ffbB30f
ホークアイ ブラウン#a54a00
ホークアイ ブルー#3c3c9e
さて、冒頭のサギ色の話に戻りますが、寝起きのスマホで検索してみると、もちろんそんな色はなく、ただ徳永英明の「風のエオリア」という曲の中で「鷺色」という言葉が出てくることを知りました。
鷺色の風におどるとか、そんな歌詞らしいですけど、それってどんな風?
色はともかくもなんだか魚っぽいにおいがしそうな風です。
2020年11月はじめ記