自由研究
アカショウビン問題について反省した
長野県北信の森に飛来するアカショウビン。それに群がる心ないカメラマンとバーダー。
拙サイトでも「アカショウビンを自称野鳥ファンから守る提案」と題し、2009年に記事をアップし、またこれまでトップページにリンクを貼って、一応問題提起してきたつもりです。
当サイトの数少ないアクセスの中には、「アカショウビン」で検索して来た方もおられるので、アカショウビンに関心のある方にこの記事は読んでもらえた可能性は少しだけあります。
この問題が持ち上がってからは、アカショウビンを見るためにこの場所を訪れることはありませんでした。自分が行くことは混雑に拍車をかけることになり、それはアカショウビンにとってもマイナスだと思ったからです。
でも、伝え聞くカメラマンの横暴伝説?に触れる度に(ツイッターでは、三脚を持たないヤツ、観察だけのヤツは邪魔だとか、そういうことを言う方もいたらしいという情報もありました)、怖いもの見たさで、実際どんな様子なのかを一度は見てみたいと思っていました。
現状把握
6月の平日、半休がとれたので、長い時間とどまらないことを自分に課し、現地に行ってみることにしました。平日ですから、それほど混雑はしないだろうという予測もありました。これは結果的には甘かったのですが。
静かな静かな森の中。カメラマン、バーダーの姿は少なく、新調したスコープを担いで気持ちよく歩きました(アカショウビン以外の話はこちらにアップ済みです)。
ところが突然、行く手に異様な光景が見えてきました。たくさんの人が大きなレンズを構えています。結局、ここ以外ではほとんど人に会いませんでした。アカショウビン目当てに、大変局地的に人間が分布していたことになります。
この森には野鳥撮影・観察以外の方も訪れます。。散策を楽しまれている途中、これに出会ったら相当異様に感じるでしょう。心構えをして行ったはずの私でさえ、やっぱりびっくりしましたから。
デジスコの方はいなくて、全部が一眼に長玉を構えたカメラマンでした。この「群れ」の一番端っこに一応スコープを立てまして、皆々様の視線方向をしばし探索。枝の向こうにアカショウビンの姿を認めました。赤い姿が森の中で動く度、「カカカカカッ!」とシャッターの連続音が響きます。
10分ほど観察をして、これでお腹いっぱい、移動かなと思ったのですが、一番最後に来て一番最初に立ち去ることになりました。皆さんは依然としてアカショウビンに集中熱中。きっと何時間もここにいて、さらにこれから先何時間も居座るのでしょう。
遊歩道の道幅一杯に三脚が立てられているので、通れません。
「あの…通りたいんですけど。」
そう声をかけなければどいてはもらえませんでしたし、すみませんという言葉もありませんでした。かえってにらまれたり。そしてこっちが「すみません…」って言いながら通ったり。
一度構図を決めた三脚を、通行人のために動かすというのは、面倒なことなんでしょうけど、でもよく考えればこっちが恐縮するのはおかしな話です。
私なんかは同じ穴の狢ですので、まあいいんですけど、一般通行者にとっては雰囲気悪いことこの上ないです。
大声でしゃべる、周辺の植生を踏み荒らすなど、噂に聞こえてきたようなマナー違反を目にすることはありませんでしたが、営巣場所での長時間待機に加え、通行の邪魔になるような占拠状態は大いに問題だと思いました。
そして恐ろしいのは、これが平日の午後の光景であることです。土日祝日にはどうなるのか、恐ろしくて想像ができません。^^;
通行禁止へ
そうこうしているうちに新たな動きが。
日本野鳥の会長野支部などの働きかけによって、この場所の通行を禁止する方向で検討が始まっていることを教えていただきました。
そして反省したんです。webにアップしただけで、何か自分なりに行動したつもりになっていたことを。
2009年に書いた「アカショウビンを自称野鳥ファンから守る提案」でも、
・入口に見張り小屋を設け、6月-8月の三脚持ち込みを禁止する。
・入口に料金所を設け、持ち込み機材の価格数%を入山料、入林料として徴収する。
・アカショウビン画像の単純所持を禁止する改正法案を今国会に提出する!
などの、中にはややふざけた提案もしていたのですが、
・問題となっている通路を通行禁止にする。
という提案もしていて、さらに「実現の可能性を探るべき」だなんて人ごとのように書いていたんです。インターネット上で批判したって、それがどれだけの力になるのか。それは単なる自己満足じゃないのか。
世論を動かすだけの影響力をもっているサイトならいざ知らず、辺境に位置するサイト管理人としては、書いただけでは行動したことにはなりませんでした。実際に関係機関に意見を伝えていかなければ、アカショウビンを守ることにはなりませんでした。
関係各位のご努力に敬意を表し、以下長野地方事務局からアップされたブログ記事より引用。
-----以下引用
2011年06月14日
(前略)残念なことに、カメラマンが集まる場所では、植生の踏み荒らしや三脚設置による通行者への迷惑、営巣中の野鳥へのストレス等の問題が生じております。このため(中略)野鳥の生息環境や植生保護の観点から、一部遊歩道を6月15日(水)より、当面の間、通行禁止とさせていただきます。また、巡視活動を強化するとともに、野鳥撮影のマナーブックを配布し、啓発を実施しております。(後略)
-----引用ここまで
通行禁止になってからは現地に行っていません。なんでここから入れないんだ!というようなトラブルはあったのかもしれないし、なかったかもしれないです。そこはよくわかりません。
観光面では少なからず打撃になってしまったのでしょうか。
無事巣立ちへ
再び地方事務所のブログ記事。これは今月(8月)のものです。
-----以下引用
2011年08月04日
(前略)平成23年6月15日(水)より営巣中の野鳥保護のため一部遊歩道について立入禁止の措置をとっておりましたが平成23年8月1日(月)に、ヒナの巣立ちを確認しました。
このため、8月5日(金)から、立入禁止を解除します。この間(中略)御不便をおかけしましたことをお詫びするとともにこれまでの御理解と御協力に感謝いたします。ありがとうございました。(後略)
-----引用ここまで
なお引用元ブログは 「ほっとスタッフブログながの」、URLは http://nagachi.nagano-ken.jp/です。
よかったよかった。この規制がこれから恒久的なもの(もちろんその年によって規制場所は変わることになるでしょうが)になればなと思います。
2011年8月なかごろ記
以下再掲
・長時間の撮影(待機)によって鳥の繁殖にストレスをかける可能性があること。特に数を減らしている夏鳥など、慎重に対応すべき種があると思います。
・鳥の巣に近づくことで捕食者に狙われやすくなる可能性があること。
・撮影そのものに問題がなくても、出版・公開された写真が営巣写真を撮ろうとする人々を増やし、繁殖場所の特定につながり、結果的に鳥の繁殖に悪い影響を与える可能性があること。以前は写真図鑑や雑誌でも営巣写真をよく見かけましたが、最近ではなるべく掲載しないことが出版の世界では共通認識になっているものと思います。しかしwebでの公開にはかなり問題のある状況ではないでしょうか。
「可能性」ばっかりですが、そのくらい臆病でちょうどよいのだと思っています。
もちろん、学術調査や、巣と人との距離が伝統的に?もともと近い場合(軒先のツバメや神社のフクロウなど)、遠くから見通せる巣の場合(鉄塔のカラスや芽吹き前の森のキツツキなど)のように許容できるもの・ケースはあるのでしょう。
2006年7月なかごろ記
2023年1月はじめ一部改訂
過去の関連記事
・自由研究「わかりあえない夜」2006年7月
・自由研究「わかりあえない夜・その後」2006年7月
・野外手帳「軽井沢にて」2009年1月
・自由研究「アカショウビンを自称野鳥ファンから守る提案」2009年7月-2010年1月
・自由研究「嗚呼カメラマン」2011年5月