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新種発見「スペクタクルド・フラワーペッカー」

少し前のことになってしまいますが、ニュースで新種の鳥が発見されたことを知りました。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100114-00000405-reu-int

-----以下Yahoo!Japanニュースより引用

東南アジアのボルネオ島で新種の鳥発見=英研究者ら

1月14日15時8分  配信 ロイター[オスロ 14日 ロイター]

英国の研究者らが14日、東南アジアのボルネオ島で新種の鳥「スペクタクルド・フラワーペッカー(メガネハナドリ)」を発見したと発表した。声明によると、見付かったのは体が灰色で、白色のしまが数本入った小型の鳥で、ハナドリの仲間とみられる。昨年6月に英国リーズ大学の生物学者、デービッド・エドワーズ氏の研究チームが、ボルネオ島のマレーシア領部分の花が咲いた状態のヤドリギの上で見付けたという。

-----引用ここまで

こういうニュースってわくわくします。一番知りたいことは、どんな姿の鳥なのかですが、記事には簡単な説明しかなく、当初は画像へのリンクもなかったので、あれこれ勝手に想像してしまいました。本記事は、その脳内記録および検証記録です。

記事を読んだ直後の印象を再現してみました

「ハナドリの仲間」って聞き慣れませんが、ウッドペッカー(woodpecker)はキツツキなのでフラワーペッカー(flowerpecker)は花をつつくという感じですよね。

日本ならメジロやヒヨドリのイメージ。「小型の鳥」なのでメジロっぽい感じでしょうか。ハチドリやミツスイみたいに、くちばしが細長いかもしれません。で、「体が灰色」なので、とりあえずベースはこんな感じで。

スペクタクルド・フラワーペッカーの想像

ただ、「縞」があるというが想像しにくいのです。頭部に「線」が入っている種類はたくさんいますが。そう言えば、アビの仲間には縞模様がありますが…。

スペクタクルド・フラワーペッカーの想像

オオハム風にアレンジしてみました。これならシマシマです。でも、縞は「白い」と書いてありました。変更変更。

スペクタクルド・フラワーペッカーの想像

これなら白いシマシマです。でもやっぱりちょっと変。
小鳥には、背中やお腹に縦斑が入ったものはたくさんいます。それを縞と考えれば、こんな感じかも。これならありえそうです。

スペクタクルド・フラワーペッカーの想像

ホシガラスみたいになってしまいました。よく読むと、縞は「数本」。これだと多すぎます。なら、コゲラ風にしてみましょう。あの背中も縞模様ですよね。

スペクタクルド・フラワーペッカーの想像

いい感じです。とりえず、ここで納得していました。 

もう一度しっかり記事を読んでみました

ところが、「フラワーペッカー」の前に位置する言葉をしっかり読んでいませんでした。
「スペクタクル」ですよ。。スペクタクル映画っていうと、豪華で派手で、大がかりな演出がある映画っていうイメージです。

「スペクトル」じゃないんですよね。分光スペクトル的に塗ってみると、豪華で派手な感じになるのですが。シマシマにも見えるし。

スペクタクルド・フラワーペッカーの想像

そういえば「スペクトルマン」ってありました(下の絵は、お面を横から見ています)。
♪スペークトルマーン! スペークトルマーン! ゴーゴーゴーゴーゴゴー!!

スペクタクルド・フラワーペッカーの想像

よく覚えていないのですが、はがきに絵を描いて、スペクトルマンの怪獣デザインに応募したことがある気がします。

「スペクタクル」じゃありませんでした

ふと疑問に思ったのは、新種の鳥なのに、どうして早々と「メガネハナドリ」という和名がついてるのかということです。メガネってなによ。

さらにもう一度よく見ると、「スペクタクル」じゃなくて「スペクタクル」です。「スペクタクル(spectacle)」と「スペクタクルド(spectacled)」を辞書で引いてみました。

-----以下新英和中辞典(研究社:1979年版…古っ)より引用

spectacle 1. 光景、美観、壮観、見もの(sight)、《大仕掛けな》見世物、ショー、スペクタクル 2. めがね(glasses)
spectacled めがねをかけた(bespectacled)、〔動〕めがね形の斑のある:a - bear めがねぐま《南米産;目の回りに輪形がある》

-----引用ここまで

なるほど!英語に明るい方には笑われそうな話ですが、こういうことだったのですね。
目の回りが白いだけだとメジロ(Japanese White-eye)なので、めがねっぽく、そして数本の白いシマシマを追加すると、こんな感じかなと思いました。

スペクタクルド・フラワーペッカーの想像

いつの間にか記事にリンクが貼られていました

いい加減な妄想を繰り広げて楽しんでいましたが、しばらく経つと、記事中に画像へのリンクが貼られていました。クリックすると(PDFファイルです)写真を見ることができました。
思ったよりずっとかわいい鳥でした。上の最終イラストはかわいくないですが、方向性は20%くらい合っていたかもしれません。

想像と違ったのは、まず、"spectacled"というほどめがねっぽくないこと(他の白い縞もずいぶん違いますが)、そしてくちばしが思ったより短いことです。尾も短いです。あの写真だけではよく分からないことも多いのですが、イラスト化してみるとこんな感じでしょうか。

スペクタクルドフラワーペッカー

他のフラワーペッカーのくちばしについて、「コンサイス鳥名辞典」(三省堂1989年)で調べてみると、

-----以下引用(イラストはwebを参照しながら自作しました)
Bicoloured Flowerpecker(ニショクハナドリ):短く太く黒色
Green-backed Flowerpecker(ハナドリ:やや長く下に曲がり、雌雄ともに黒い
ヤドリギハナドリ
Mistletoe Flowerpecker(ヤドリギハナドリ):太く短く鋭い↑
Orange-bellied Flowerpecker(オレンジハナドリ):太くやや下に曲がる
アオハナドリ
Plain Flowerpecker(アオハナドリ):黒色でやや下に曲がる↑
セアカハナドリ
Scarlet-backed Flowerpecker(セアカハナドリ):短くやや下に曲がり↑
ハシブトハナドリ
Tick-billed Flowerpecker(ハシブトハナドリ):短く太く黒色↑
アカハシハナドリ
Tickell's Flowerpecker(アカハシハナドリ):やや長く下に曲がり、淡赤色か黄色↑
White-bellied Flowerpecker(シロハラハナドリ):やや長く下に曲がり黒色
Yellow-throated Flowerpecker(キムネハナドリ):太く黒色
ムナフハナドリ
Yellow-vented Flowerpecker(ムナフハナドリ):(記述無し)

-----引用ここまで

長いという記述の種もありますが、イラストにしたようにハチドリやミツスイほど長いわけではありません。

各種の説明を読んでいくと、木の実(特にヤドリギの実)も食べる種類が多いことが分かりました。今回のメガネハナドリも、ヤドリギでの発見です。

ヤドリギの花は小さいので、最初に想像したような長いくちばしは必要ないのかもしれません。ハナドリ科の鳥は、舌の構造は吸蜜に適したものになっているそうです(花蜜は消化がいいので、砂嚢を通さないこともできる特別な構造ももっているみたいです)。

また、ここに挙げた種は8cm-10cm程度の全長でした。皆尾羽が短いらしいので単純に比較できませんが、日本最小のキクイタダキ(全長10cm)より小さい種が多そうです。

小さくてしかも樹上性となると、これまで発見されなかったのも分かる気がしました。

おまけ(その他のスペクタクルド)

ちなみに、スペクタルドな鳥は、以下のものが見つかりました。正式な英名ではないものもあるかもしれません。いつか特集してみましょうかね。

スペクタクルドな動物はこんな感じです。

インドコブラは納得のスペクタクルドでした。
和名で「メガネ」とついていても、スペクタクルドじゃない典型的なケースはメガネザルでしょう。英名はspecter lemurでした。specterは幽霊・妖怪、lemurはキツネザルの意味です。tarsierという名前もあるようなので、こっちで呼んであげた方がよさそうです。

2010年1月記

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