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嗚呼カメラマン

5月中旬の戸隠森林植物園(野外手帳はこちら)で、「こんなカメラマンに遭遇してしまいました」という記録です。

その1:疑惑のコマドリ

この日の戸隠は、鳥の個体数は少ないながらも、なかなかいい雰囲気で気持ちよく歩いていたんです。お日柄もよろしいので、バーダーやカメラマンはそれなりにいたものの、どちらかというと空いている感じでした。

戸隠タラノキ

高台園地のあたりでコマドリの囀りが聞こえてきました。
戸隠森林植物園内では、コマドリのイラストが案内看板に使われていますが、実際の生息数は園内に限れば少なく、昨年のコマドリは貴重な観察機会でした。
この時聞こえた声は小さく、自分の歩くコースからは遠いように感じました。でも、今年もコマドリが来たんだ!と心は浮き立ったのでした。

アオジこれはアオジ。

高台園地からしばらく歩き、枝に止まっているニュウナイスズメを双眼鏡で見ていたとき、キヤノンの白レンズを担いだ方が後ろから声をかけてきました。

「何かいますか?」と聞かれたので、 「ニュウナイです。」と答えたんです。そしたら、
「なんだニュウナイか」と言うんですよ。そして、
「ニュウナイならみどりが池のところでたくさん撮りましたよ」とのありがたいありがたい撮影情報までいただきました。

「なんだ」には、ニュウナイスズメなんて珍しくないという意味はなく、たぶん
「自分はさっきたくさん撮ったのでもうニュウナイはいいや」という意味だろうとは思いましたが、まあ失礼な物言いです。

私は、双眼鏡を持たない野鳥カメラマンには、単なる被写体の一つとして鳥を撮っている傾向があるという先入観を持って接することにしていますが(そういう方とは話が合いませんので、用心してかかります)、案の定この方もそんな雰囲気満々で、正直言って「この人とはあまり話したくないな」と思いました。

キビタキシジュウカラ

ちょうどコゲラの赤い羽毛を観察するチャンスが巡ってきたので、とりあえずスルー。でも、かなりの話し好きらしく
「今年はキビタキが少ないですね」
「でもさっきはキビタキが道案内をしてくれましたよ」
「この間コルリを撮りましてね」

とどんどん話しかけてくるので、無視をするわけにもいきません。そのうち、
「去年はコマドリをここで撮りました」というので、「戸隠にコマドリは少ないですよね」と返したら、
「いや、ここで撮ったんですよ-!」と力説。

どうも自分が「撮れた」「撮れなかった」ということが、この方の中で何かの基準になっているようでした。やっぱり鳥好きというよりは、自分の撮影成果に興味関心があるタイプのようです。

コマドリの話になったので、「そういえば、コマドリが鳴いていましたよね」と、先ほどの囀りについて聞いてみました。この人も聞いたのかな?くらいの軽い気持ちだったのですが、話題に出してみてよかったです。コマドリの囀りの真相が明らかになったのですから。

「あ、あのコマドリはテープ。さっき、新潟から来たという人が流していましたよ」
との驚くべき答えが返ってきました。あっけにとられていると、
「私も一緒にいてさ、流していいか?って聞かれたんだけど、今日は人少ないから迷惑にはならないしね」
と、さらに口があんぐり開いてしまうようなお言葉が続きました。

こういう人たちの「迷惑」は「人」に対してのものであって、決して「鳥」への迷惑ではないんですよね。これは画像掲示板での画像公開に関する妙なマナーに通じます。

※私の持つ違和感について、くわしくはこちら→「わかりあえない夜・その後

「困ったもんですね」と返したのですが、キヤノン白レンズオジサンにはそれが予想外の反応だったらしく、それからもう私に話しかけてくることはありませんでした(その後、同じルートにいた方とさかんに情報交換をしていました)。

ミズバショウ

野鳥カメラマンのマナー違反の話はあちこちで読んだり聞いたりします。北信地方のアカショウビンを巡ってはひどい状況が今年も心配されます。

※一昨年の記事ですけど、くわしくはこちら→「アカショウビンを自称野鳥ファンから守る提案」。

でも、自分がそういう撮影現場を意図的に避けてきたこともあって、ひどいマナー違反の現場を見たことはなかったんです。アカショウビンのときも、自分ではその場所に行くことはやめていました。

なので、鳴き声を野外で流し、なわばり防衛に出てくる個体を撮るという手法は知っていましたが、現場近くに居合わせたのは初めてでした。
自分の撮影ポイントでならまだしも、戸隠のような探鳥地・観光地でもこういうことをするんだ…ということが驚きでしたし、それを悪いことだと思わないキヤノンオジサンにも驚きました。

きっと、自分の撮影ポイントで普段からこういうことを当たり前のようにして、すばらしい撮影成果をあげているんでしょう。だから、ついつい「人のうち」でもやってしまう。

その2:カタクリ撮影大会

気持ちを取り直して、情報交換に夢中なキヤノンオジサンを置いて鳥見続行。マミジロに出会えたりして、なかなかいい気持ち。ところが、またしてもカメラマンの横暴が待っていました。今度は山野草カメラマンです。

カタクリ

モミの木園地に向かう径の両脇にカタクリの群生があるのですが、そこにカメラマンが寝転がっていました。年齢は50-60といったところでしょうか。

私もローアングルの写真は大好きです。人がいなければ地面に這いつくばって撮ることももちろんありますが、ここは森林植物園の遊歩道。少なからぬ人が行き来するところです。横たわられてはじゃまもいいところです。

ローアングルキクザキイチゲ

他に人がいてもローアングルの写真を撮りたければ、片手を伸ばしてカメラを低い位置に保ち、あとはノーファインダーで適当にシャッターを切りながら、結果を見て構図やピントを調整するべきでしょう。デジカメならできるはずです。
ちなみに、上は片手持ちでノーファインダー撮影のキクザキイチゲ。カメラはコンデジです。

ところがこのおじさん達は、人が通ってもどこうとしません。通る人に対して「すみません」の言葉もありません。結局一人はまたいで通過する羽目になりました。

寝っ転がって撮ってもいいんです。でも人が来たらどいてくださいね。

ツイッターにこのことを書いたら、踏んでしまえばよかったんだ!とアドバイス??をいただきましたが、年配者を踏んずける訳にはいきません。でも、この年になって人に迷惑をかけていることに気づけないことには、がっくりきたのでした。

まとめ

よい写真を撮りたいという欲の、改めて恐ろしきことよ。自戒を込めて。

2011年5月おわり記

2023年1月はじめ改訂

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